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第五十七話 3月6日更新
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スキー場から山へ、山から温泉へ テレマーク・スキーで、人生も迷子となる
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放山で、迷子になる

ちょっとしたミスも大目に見てくれそうな穏やかに晴れたある日、このシャルマン火打スキー場の上からバック・カントリーへ入っていく。そう、放山(1189.5 メートル)へとつづく坂を登っているのだ。
そこには、道があるわけではない。道標ももちろんない。地図を頼りに、雪に覆われた裏山を歩いていくのだ。
この山を越えて、その向こうにある笹倉温泉を目指しているのである。
放山頂上からは、火打山をはじめとする頸城(くびき)山塊を見わたすことができる。
山の向こう側には、だれもいない斜面がつづいている。踏みあとがまったくないその斜面を支配している静寂には、恍惚感がみなぎっていた。
ここから、スキーによる大滑降がはじまるのだ。
しかし、滑り出してすぐにわかったことは、斜面は小さなミスも大目に見てくれない、というあたりまえのことだった。
というわけで、豪雪地帯の雪にまみれてただただ落ちていくのである。絶叫とともに。

さらには、山を登るのはそのピークを目指せばいいのだが、下る方向は四方八方どこへでもという感じなので、そのときこそ、地図をよく見て、現在地を把握し行く方向をしっかり定めなければならない。
しかも、僕のような滑りであっても、スキーでの下りは距離と標高差をどんどんのばしていく。
何度も地図とコンパスを見ながら現在地を確認する。
ところがというか、やっぱりと書くべきか、今日も迷子なのである。かかとが自由なテレマーク・スキーは迷子になる自由もあるのだ、とつねづねいってきたが、ほんとやれやれ、である。
しようがないから、さらに目を細めて地図を凝視する。目を細めるとものをちゃんと考える助けになる、とでもいうように……。
で、わかったのは、読図は得意部門じゃなかった、ということだった(じゃなにが得意部門なんだ、とは聞かないでくれ)。

こうしたときには、頼れる仲間がありがたい。
僕は先頭を行くのをあきらめて、いっしょに山へやってきた友人のうしろにそっと従うことにした。
同行の友に、幸あれ。
ま、このようにバック・カントリー旅はどたばたと進んでいくのであった。いつものように。

自由のあるスキー場ではどこを滑っていいものやらととまどい、バック・カントリーでは迷子となる。
でも、こうして雪に覆われた山へとやってきて、目の前のOff The Beaten Track(踏みならされていない道)を眺めていると、それはまるで、人生を素敵に踏みはずすための道しるべに思えてくる。
この山を下りれば温泉がある。そしてそこには、冷えたビールもある。

 
こんなことを繰りかえしている3月からの日々だ。ずる休みをしている暇がない
踏みならされていない道をどこまでも突き進んでいくバック・カントリー旅である
便利なものがあふれ、たくさんの情報が手に入るこの時代にこそ、シンプルで優雅で、少しばかり不便な旅が、似合っている
青い空の下につづくだれもいない山々は、文句のつけようがないほどの静けさでたたずんでいる
青い空の下につづくだれもいない山々は、文句のつけようがないほどの静けさでたたずんでいる
人生のどこへつながっているかわからない踏みならされていない道を進んでいくことは、すばらしく自由なことなのだ
 
※2『インフィールド』
http://www.in-field.com/
 
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