トップ > 堀田貴之のおとなのずる休み
連載 おとなのずる休み
バックナンバー プロフィール
第四十五回 9月5日更新
1 2
9ストリングス・リュートのブルース 吟遊詩人をめざした猛暑の日々だったのだ
<2>
家族のための夏の工作
そもそも僕は、ものを作ることが好きなんだけど、得意ではない。手先も器用じゃない。工具や道具の使い方もあまり知らないし、うまくはない。
そしてなによりも、単純作業にすぐ飽きてしまう。根気がないのだ。
さらには、できあがりをじっと待つ、という我慢強さを持っていない。ボンドで板を貼りあわせたら、すぐに、もう乾いたかな、といじりたくなってしまうのだ。まだだめだ、とわかっていても、だめだとわかっていればいるほど手を出したくなる。
ようするに、ものを作ることには徹底的に不向きな人間なのだ。
だからこそ、こうしてものを作りたがるのだろう。
人間は、ないものねだりの人生を送るために生まれてきたのだ。
ここまでできれば、最悪は柄杓(ひしゃく)としても使える……木製(スプルース)のフレットを貼りつけ、1本1本丸く削るという気の遠くなるような作業もあった。フレットのポジションマークは、つまようじで作ってみた
 

こうした小さな傷やへこみが、いたるところに。少々へこんだからと、いちいちへこんではいられないというわけで、リュート作りの苦労話にはことかかない。
削りなおしたり、もういちどボンドをはがしたりなどは日常で、ちょっとしたミスぐらいでは、驚いたり嘆いたり悲しんだりもしなくなってしまった。
リュートができあがったらこれでブルースを弾こうと思っていたが、作る作業そのものがすでにブルースなのだ。
美しいではないか。リュートを作りながら、頭のなかではいつでも『9ストリングス・リュート・ブルース』が鳴っている。
そうそう。
結局、弦は9本とした。9ストリングス・リュートとした。ふつうの6弦ギターの下(高音部)3本を復弦にしてみよう、と考えたのだ。
ナイロン弦の復弦ギター、というのは見たことがない。ちょっとおもしろそうに思ったのだ。
おかげで、それはそれでけっこうやっかいな作業となったんだけど……。

ティーンエイジのころからギターが好きで、もう35年近くも弾いている。リュートの基本的な構造は、ギターと同じある。だから、作りながらも弦楽器のいろんなことがイメージできて楽しかった。想像は頭のなかにどんどん膨らむのだ。
と同時に、キットという決められたものであることが悔しくもあった。ここをかえたいと思っても、無理な場合もある。
それに、けっして安いキットではないんだから、もう少し材料にこだわってほしいものだ。
が、文句をいってもしようがない。楽器作りは、初めての挑戦なのだ。これを機に、つぎのことを考えればいいか。また来年も工作の夏がやってくるのだ。
作れば作るほど、キットではなく、自分のやり方で一から楽器を作ってみたい、と思ったのだった。

9弦としたことで、ブリッジとヘッド作りは苦労した。付属のナットやサドルはプラスチック製だったので、牛骨のものを買い、サイズに合わせて削りなおした
 

それにしても、作りながら足りない道具をそろえたり、途中で思いついては作業を変更するもんだから、毎日のようにDIY店へと出向いた夏でもあった。
夏は、DIY店が大にぎわいである。やはり、夏のお父さんは、だれもが工作に明け暮れているのだ。
僕は近所の『ホーマック』へ出かけては、ヤスリを物色したり、小さなノコギリを買ったり、クランプを買い足したり、電動工具を憧れの目で眺めたりしていた。
ふと気がつくと、同じような人が多いのだ。昨日もあの人を見かけたな、とお互いに目が合ってしまうのだった。
それにこの店には木工の工房があり、買うには勇気がいる電動工具を使わせてくれるのだ。

いつごろからか、ガーデニングや日曜大工はちょっとしたブームである。手作り、手作業には、この便利な時代に忘れかけているなにかが見えるし、なによりも遊びを自分で作っているような感覚がうれしい。
とすれば、これからは楽器作りも人気が高まるだろう。楽器を弾く人は多いのだから。
と思ったが、どうやらお父さんの工作は、家族みんなのためにならないとだめらしい。家族と庭でバーベキューをするための椅子やテーブルを作ったり、ウッドデッキを作ったり、というのが模範的、だそうだ。自分だけの趣味のものを作っても、家族には歓迎されない、という。
たしかに、このリュートを作っている約一か月のあいだ、かみさんはもちろん、娘や息子も、僕のその行動にはまったく興味を示さなかった。そして、「できた!」と叫んでも、どんな音か聴かせて、とはだれもいわなかった。そればかりか、ひとりとして振り向きもしなかったのだ。
やれやれ。
でも、ひと夏のあいだ、お父さんがひとり静かに過ごしている、というのはじゅうぶん家族のためになっていると思うんだけどなあ。僕は。

 
塗装は、オイルフィニッシュとした。自然な木の質感を出したかったからだ
こうしてできあがった9ストリングス・リュートである。楽器コレクションがひとつ増えた、と喜んでいるのは僕だけである、もちろん
 
 
前のページへ
ページトップへ

もういちどBE-PALトップへ

気になるトピックス

 

みんなの投稿受付中!

写真のたまり場

写真のたまり場

 
ややトク・ややとく Station50コミュニティ会員ならツアー・イベント旅行代金が5%OFF
ややトク・ややとくぽけかる倶楽部 話題沸騰! 日帰りツアー・体験イベント
モラタメ.net 壁紙でデスクトップをもっと楽しく! フレッツ光のキャンペーン実施中 全国の有名占い師やプロの心理カウンセラーと電話で相談 BIGLOBE会員情報誌『サーイ・イサラ』