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堀田貴之のずる休み日記 「ずる休み」という言葉に、心をびっとふるわせた人。そうです。いつまでも少年の心を持ったおじさんたちは、今日もずる休みをたくらんでいます。半日あれば、半日。二日あれば、二日。一週間あるなら、一週間。一か月暇なら、……。堀田貴之が、今日もずる休みの旅に出かけます。
第二十一話 9月6日更新
今度は、スピーカースタンドを作ってみたぞ
オールドソニーの血筋をしっかりひいているスピーカーSS-A3(外側)と、第十七話で紹介した手作りスピーカーのRIT-KIT0701。ふたつのスピーカーを聴き比べる毎日

夏といえば自由工作である。
と、以前、このサイトのブログ『地球はでこぼこ』にも書いたが(8月14日付)、ほんとこの夏は工作ばかりの毎日だった。
でも、ことのはじまりは、春だったのだ。

「冬の異常な雪の多さで木がいっぱい倒れ、春からは森の手入れが大変です」と、NPO法人『信越トレイル』(※1)のスタッフなべちゃん(渡辺貴光)が、ぼやく。彼は、飯山『なべくら高原・森の家』(※2)のスタッフでもあり、雪が溶けたら倒木だらけの信越トレイルと森の家の敷地内を整備する、という重労働が待っているのである。
人が困っているのを黙って見過ごせない僕は、さっそく長野へと向かったのだ。チェーンソウを振り回し放題だぞ、と。
とはいえ、チェーンソウなど扱ったことはない。だからこそ、憧れているのである。
そういえば、デニス・ホッパーとジョディ・フォスター主演の映画『ハートに火をつけて』に、ボブ・ディランが友情出演みたいな感じで、ほんのちょい役で出ていてびっくりしたことがある。恋の逃避行が描かれたロード・ムービーなんだけど、なぜかディランが出てくるのだ。そして、そのときのディランの役は、チェーンソウ彫刻家だった。
ボブ・ディランもチェーンソウが好きなんだ。きっと。
スピーカースタンドになりそうな倒木を見つけて切り出す。それにしても、切るのはいいが、運び出すのが大変
で、集めてきた丸太数々。左から、楢、白樺、杉 いよいよチェーンソウ・アーチストとしてデビューである
そんなわけで、晴れたある日、なべちゃんと僕はチェーンソウを手に森へ入っていった。ふたりしてこれからトレイルに倒れる木を片づけていくのだ。
手にしたチェーンソウはずっしりと重い。
「ビールのジョッキより重たいものを持ったことがないけど、こんなの振り回せるのだろうか」
心配性の僕は、おずおずとなべちゃんに聞いてみる。
「いや、振り回さなくてもいいです。というか、ぜったい振り回さないでください!」
どうやらなべちゃんも心配性らしく、僕の顔見て不安げだ。
森は、たしかにいたるところ倒木だらけだ。雪の重みで倒れた木々である。これらを手で運べるサイズに切って、山から運び出すのだ。これはたしかに重労働だわい、と僕は仕事をはじめる前から元気をなくしてしまった。
しかし、「おお、そうだ。丸太でスピーカースタンドを作ろうではないか」と思いついたのだ。
にわかオーディオマニアとしてデビューした今日この頃である(このことは、『ずる休み日記』バックナンバーの第七話第十七話を見てください)。ちょうどスピーカースタンドがほしいな、と思っていたところだったのだ。
「じゃ、まずはこの木を切って運び出しますか」と、なべちゃん。
「いや、この倒木はまっすぐじゃないから、あっちにしよう」と、僕。
「????」
「まあまあ、堅いことはいわず」
まずは、太い杉の木に狙いをつけた。これならがっしりとしたスタンドが作れるぞ、と。
でも、横を見たら白樺の木がある。これもいい。部屋に映えるよなこの白い木肌は、と。
さらには、楢の木もある。こんな堅い木でスピーカースタンドを作ったら、さぞかしたくましい音がわが部屋に響くだろう、と。
こうして、僕はなべちゃんに手伝ってもらい、自分のほしい木だけを森から運び出すことに成功したのだった。
堅い楢の丸太を三本足としてみる。でもそのあとのアイデアがつづかない。使い途が決まらないまま、いまだわが家の軒下に転がっている
杉の丸太は椅子に。『森の家』スタッフのたまちゃんも気に入ってくれた
つぎの日も朝から森林整備である。
と思ったが、持ち帰った丸太を成形したい僕は、森へは行かず『森の家』の施設内でチェーンソウを手に過ごすことにした。なべちゃんは、そんな僕にあきれてひとりで森へ行ってしまった(くれぐれも振り回さないでください、と念を押して)。
さっそく、チェーンソウ・アーチストを気取ってみるが、にわか彫刻家にうまくチェーンソウを扱えるわけがない。
僕のまわりには、使い途のなくなってしまった丸太がいくつも転がりはじめた。原稿用紙ならぐしゃっと丸めてゴミ箱めがけ3ポイントシュート、と投げるところだが、丸太ではそうもいかない。
森の家スタッフのたまちゃんが、「薪を作ってるんですか?」などという。
「失礼な!」といおうとしたが、たしかに使い途のない丸太は薪にしかならない。しょうがない、使えなくなった楢の丸太には、なめこの種駒を埋めることにしよう。
そんなこんなの日々を過ごし、僕は、春の飯山の森から、何本もの丸太をわが家へと持って帰ったのだった。
「これちょうだい」、と転がっている楢の木に、なめこの種駒を打ちつけるあっこちゃんである ネコの額を30個ぐらい集めたぐらいのわが家の裏庭に、なめこの種駒を埋めた丸太を転がしておく。なめこができるのは、来年の秋だという。それまで覚えていられるかどうか……

そして、夏である。
丸太のスピーカースタンドに飽きたわけではない。ギタースタンド(8月14日付ブログ参照)に引きつづき、もうひとつスピーカースタンドを作ろうと思いたったのだ。夏休み=工作、と世のお父さんに組み込まれているDNAが騒いだのだ。
そこで、近所のDIYショップへと出向き、2×4のホワイトパインの柱とホウノキの板を買ってきた。
材木だけだと、2,330円。それに、ねじや塗料やサンドペーパーなどなどをプラスして、締めて3,902円なり。
まずは、色を塗る。重厚な感じがほしい。人間が軽い分、重い雰囲気がいい。それに音もどっしりするような気がするではないか。
着色の終わった木片を組み上げていく。ちゃんとした設計図があるわけではない。頭のなかのイメージを、その場あわせで、作っていくのだ。

DIYショップで買ってきた木を切りそろえ、塗装し、設計し、そして、できあがり
5円玉の上に小さな木の玉を(木の種類不明)。これを6つ用意し、3点支持でそれぞれのスピーカを置く。白樺の丸太の台も、同じようにした
じつは、日曜大工が得意なわけではない。その逆で、不得意分野のひとつなのだ(じゃ、得意分野はなんなのだ? などと聞かないでくれ)。
木工作業の得意な人を見ると、いつも嫉妬している。そして、僕もちゃんと使える机や椅子を作るぞ、と過去どれだけの木を無駄にしてきたことか。
山の木を切ってスキー場なんか作るな、などと偉そうなことをいってきたが、僕が日曜大工で失敗してきた木を積み重ねると、一山ぐらいはできそうだ。
それでも、暇があるとDIYショップへと足が向いてしまう。
チェーンソウで彫刻のまねごとをやっているときもそうだったが、ものを作っていると、なぜか時間のたつのを忘れてしまう。無心になれるのだ。

いい歳をした男が、蕎麦打ちに夢中になったり、陶芸にのめり込んだりするのがよくわかる。しかも、季節は夏だ。海だ山だ、海外旅行だ、とみんながはしゃいでいる。そんななか、だれにも相手にされず、成田までの切符も買えない男は、ひとり黙々と自分の世界に入りこむしかないのだよ。
いい音を聴きたいがためにスピーカースタンドを作っているんだけど、音のことは二の次なんだ。僕の頭のなかでは。
できあがったスピーカースタンドを眺めながら、大汗をかきつつもこんなに集中したときを過ごしたのはいつ以来だろう、と思ってしまった。
わが家のすぐ近くにある小学校全校生徒の自由工作を、いますぐにでも請け負いたい夏である。『夏休み自由工作請負人』として余生を送るのもいいかもしれない。
(※1)『信越トレイル』 http://www.s-trail.net/
(※2)『なべくら高原・森の家』  http://www.iiyama-catv.ne.jp/~morinoie/
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