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堀田貴之のずる休み日記 「ずる休み」という言葉に、心をびっとふるわせた人。そうです。いつまでも少年の心を持ったおじさんたちは、今日もずる休みをたくらんでいます。半日あれば、半日。二日あれば、二日。一週間あるなら、一週間。一か月暇なら、……。堀田貴之が、今日もずる休みの旅に出かけます。
第十七話 7月5日更新
真空管アンプにつづき、今度はスピーカーを作ってみた オーディオ心酔への道を歩きだしてしまった
夏本番を迎えたが、わが家の財政はあいかわらず冷え込み、世間の乾いた風は心をかさかさにしてしまう。
しかし、この仕事部屋では、今日も温もりと潤いのある音楽が鳴っている。いつもは謙虚な僕だけど、こればかりは、大いに自慢してしまうのだ。
自作真空管アンプのおかげである。
この「ずる休み日記」の第七話2006年2月7日号(温もりの『真空管アンプ』を作ってみた)で書いた、あのアンプである。

そんなん知らん、という人は、バックナンバーからぜひ見てください。
読んだけど覚えていない、という人は、今度こそ忘れないように、読むだけではなくノートなどに書き写してください(「書いて覚えろ」と、小学生のときからよくいわれたよなあ)。

ま、そんなことはともかく……。
この真空管アンプを作ってからというもの、いろんな人が声をかけてくれる。
真空管アンプは元気かい? といった具合に。
そしてある日、おとなりのサイト「いつでもボンビバン〜もういちどカメラ」(※1)の案内人・藤森元之さんが、僕の顔を見るとこういったのだ。
「つぎはスピーカーだね。スピーカーを替えると、音がすごく違ってくるよ。スピーカーも自分で作ってみればいいよ」
スピーカーを作るのは簡単だから、などと無責任なことをいう。

ならば、つぎはスピーカーを作るしかないか。僕は、すっかりその気にさせられたのだ。
よし、大木を切って、削って、削りだしの丸太にスピーカーを取りつけて、てなものを作ってみようか、と話をでかく考えてみたが、しかしこれでは受け狙いでしかない。もちろんそれでも音は鳴るだろうけど、作るならちゃんとした音の出るスピーカーが欲しいからなあ。
ただし、ちゃんとした音といっても、オーディオの世界は恐ろしくディープだ。そして、高い。
高級家具を買いそろえると思えば、それほどでもないよ、とオーディオ好きの人はいうが、部屋に低級家具もそろっていない僕としては、なかなか手が出ない。それに、そもそもどれに手を出していいのかもわからない。
そんなことをいっていたら、藤森さんが東京・神田にあるおもしろいお店を紹介してくれた。
「リビングミュージック」(※2)というこだわりのオーディオショップである。どのあたりがこだわりの店かというと、「10万円コンポの専門店」というのである。
「リビングミュージック」代表の広瀬さんは、「高いお金を出してコンポをそろえれば、いい音はあたりまえ。10万円のセット(スピーカー+アンプ+CDプレーヤー)でいい音を提供したい」というのである。
そのため、日々、いろんなメーカーのものを組み合わせては視聴している。そして、これだ! と納得したものだけを扱っているのだ。
10万円コンポと聞くと、たしかに手が届きそうな気がしてくる。
オフィス街のビルの一室の落ち着いた店内には、いくつかの厳選されたスピーカーやらアンプなどが並んでいる。もちろん10万円コンポばかりではない。値段を聞かなきゃよかった、と思うような価格のスピーカーもある。さらには、なんと200万円近くもするベルトドライブCDプレーヤーを作るブランド、C.E.C.(※3)の製品も視聴できる。
僕はその日、いろんなオーディオの音を聴かせてもらい、なんだか、耳が得をした気分になったのだ。
「10万円コンポの専門店」リビングミュージックは千代田区神田にある。じっくりと試聴できるよう、予約制を採用。部屋を潤いのある空間に換えたければ、TEL03-5294-4555へ
専門店の雰囲気たっぷりの「六本木工学研究所」のお店、「麻布オーディオ秋葉原店」
「六本木工学研究所」オリジナルスピーカー組み立てキットRIT-KIT0701 そして、その広瀬さんが10万円コンポのセットに選んだスピーカーが「六本木工学研究所」というところと共同開発したもので、その「六本木工学研究所」では、スピーカーの自作用キットも販売している、ということなのである。
今度は、その「六本木工学研究所」(※4)の直営店である「麻布オーディオ秋葉原店」へと行ってみた。小さな店内には、これでもか、といろんなスピーカーが並んでいる。
そこで出会ったのが、手作りスピーカーキットのRIT-KIT0701(※5)だ。
これは、「六本木工学研究所」オリジナルのスピーカーユニットを使用、ネットワークも独自設計のものだ。
エンクロジュアには、20ミリというぶ厚いの板(MDF:中密度繊維板)を採用 右は、ソフトドームトゥイーター。そして、アルミコーンウーファー。このふたつが部屋の音を潤いのあるもにしてくれる
スピーカーを作るのは、まず箱を作って、そこにスピーカーをつけて、そしてプラスマイナスを間違わないよう配線すればOK、と思っていたが、そんなもんではないようだ。ちゃんとした音を出すためには、計算と経験に裏打ちされた設計が必要なのだ。
スピーカーの音は、ネットワーク形成が非常に重要なファクターを占めるようだ。そもそも、ネットワークなるものがスピーカー本体に組み込まれている、などということすら知らなかった。
ネットワークというからには、なにやら複数のものがうまくつながるようなシステムみたいなものだろう。
今回、このスピーカーキットに出会ったのも、真空管アンプ〜ボンビバン〜藤森さん〜リビングミュージック〜六本木工学研究所という、ネットワークのおかげである。人間関係をはじめ、やはりネットワークが大事なんだ。
これが「六本木工学研究所」設計の自慢のネットワーク。こんなのがスピーカーのなかに入っていたとは……
配線は、これだけ。はんだづけ名人(?)としては、ものたらないのだ このスピーカーキットを作るのは、簡単である。真空管アンプ作りではんだづけを100箇所以上もやったものにとっては、ちょいちょいちょいでできあがる。はんだづけの数が、ものたりないくらいだ。
というのも、六本木工学研究所のおかげである。そもそも、だれにでも作れるようにセットされているのである。

こうしてふたたび、僕は緊張の瞬間を迎えたのだ。
そう、いよいよ音が鳴るかを試すときがきたのだ。
プラスマイナスを何度も確認し、慎重にアンプとスピーカーをつなぐ。アンプのスイッチを入れる。アナログレコードをターンテーブルに載せる。レコードの上に針を静かに落とす。ボリュームレバーを右に回す。
すると……。
きた、きた、きた、きた、きたーっ。
針がレコードの溝を刻むノイズ音からはじまり、すぐさま大音量でライ・クーダーが歌いだしたのだ。
もちろん、左右両方のスピーカーから。そしてもちろん、トゥイーターもウーファーも鳴っている。大成功である。
しっかりと引き締まった音だ。しゃきっと背筋が伸びている。しかも、じゅうぶんに艶がある。僕もこうありたいもんだ。部屋中に、緊張感と潤いが満ちあふれている。
こうして、幸せな一夜がはじまったのだ。

スピーカーは鳴らせば鳴らすほど、音がよくなっていくという。これからもどんどん音がかわっていく、とのことだ。それもまた楽しみではないか。
電気のことなどしびれるほど知らなかった人間が、こうして少しずつオーディオのことを知っていくのだ。
もっと出力のでかいアンプが欲しいなあ。ケーブルを交換するだけでも音が変わるというから、今度試してみよう。それに、この部屋を改造して音響環境をよくしよう。
すっかり、オーディオ・オタクへの道を歩きだした今日この頃なのである。
付属の吸音材を箱のなかへ。不思議なことに、これがあるとないでは大違い こうしてずっしりと重いスピーカーができあがった。古いシングル盤(ライ・クーダー「アクロス・ザ・ボーダーライン」)を出してきて、さっそく聴いてみる。
Special Thanks to 六本木工学研究所、リビングミュージック
(※1)『もういちどカメラ』  http://bv-bb.net/bonvivant/camera/index.html
(※2)『リビングミュージック』  http://forte-piano.com/
(※3)『C.E.C.』 http://www.cec-web.co.jp/
(※4)『六本木工学研究所』 http://www.ritlab.jp/
(※5)『スピーカーキットRIT-KIT0701』  http://www.ritlab.jp/shop/news/20060606.html
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