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毎日が山歩き 案内人 伊藤幸司(糸の会・登山コーチングシステム)  50歳を過ぎてからでも楽に山歩き、愉しく山登り、のんびり山遊びが楽しめる毎日を紹介します。

講座 2009.3.26更新  

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【講座76】山と「そば」


記憶に残るそば屋

私はかならずしもそば好き、そば通ではないけれど、山を下ったときの風呂と食事の選択では、やはりそば店を優先的に探したい。

若い人たちならラーメンや中華、パスタや各種エスニック料理などから選ぶかもしれないけれど、平均年齢が60歳代となるとやはり和食系。その延長にそばがある。

どの町、村にも宴会や法事のできる料亭があって、そういうところは建物も庭もそれなりのものだから行ってみる価値はある。泊まりがけで遠くに行くときには視野に入ってくるのだが、和食系の問題は、突然訪れて一品料理を気軽に頼める気の利いた店となると別のラインで探さなくてはならなくなること。

トンカツだとか天丼といえば打率は高くなるが「安くてうまい」というどこにでもある店になりかねない。あるいは有名なチェーン店が推薦される。

そば屋だって危険がある。一度ある日帰り温泉施設で、食事は周辺の店から出前をとるというシステムになっていた。危険球だと思われるものがふたつあって、ひとつは山国の安いにぎり寿司。もうひとつは町のふつうのそば屋の出前。どちらもリスクが前面に出てしまったが、悲惨だったのはそばのほうで、つまんだら全部いっしょに持ち上がった。

だから私は、そば選びの基準を一茶庵創始者の片倉康雄に始まる脱サラ蕎麦打ち職人の店を基準にしている。私の古い友人が片倉の高名な弟子のところで修業した脱サラ組で、蓼科に店を開いてガイドブックに載るようになっている。そのそばを基準にするつもりでいろいろ食べ始めたのがきっかけだった。そしてそばでは、1,000円前後の値段で、思わぬ満足感を得られるということも多い。記憶に残る食事としての確率はなかなかいい。それと、私などは「大もり2枚」とかいって、普段は敬遠している満腹感を楽しんだりしている。

そばを食べに行くのではなくて、下山後のプランの中にそばのリストをいくつか入れて、スケジュールの流れの中で、できれば行く、という程度だが、それでも十数年で千回以上山に行けばそば屋に入る回数も多い。行きたいと思っていたそば屋に行けるチャンスも少なくない。ここではそういうなかで記憶に残るそば屋を何軒か紹介しておきたい。


●筑波山

■筑波のゐだ――2005.2.19
古い民家の建材で建てた家は重厚だ。自然木のテーブルにガラス板をのせ、そこに大柄の器でそばは供される。鴨肉の焼き方をご主人がていねいに教えてくれる

超初心者が山のサイズを体験するのに、筑波山は絶妙な山だが、下ったらほとんど必ず、「ゐだ」に寄る。筑波神社からまっすぐ南に下る古い参道の脇にあるので、タクシーを呼んだほうがいい。

つけそば(1,000円)がいわゆるせいろで、ここ独特のものは鴨汁そば(2,200円)。「よく噛んで食べてください」という固いそばに決定的な個性がある。鴨汁そばを頼むと鴨肉のあぶり方をご主人がみずから手ほどきしてくれるなど、記憶に残る店となる。好き嫌いはいろいろあるとしても、記憶に残るそばであることはまちがいない。

発端は、最初に筑波山を企画したとき、電力会社で高圧送電線の保守をしている人が会員にいて、茨城県担当でそば好きの仲間が新しい店を発見したと教えてくれたことによる。以来ずいぶん訪ねているが、いつもリセットした感じで、固いそばの味わいを堪能している。

「ゐだ」(TEL029-850-8082)11:00〜19:30(そばがなくなり次第閉店)、木曜定休。建物も、庭も、器も、みなご主人の趣味といえる。


●秩父

そばどころの秩父にはたくさんのそば屋があって私などには甲乙付けがたいし、それぞれ違いがあっておもしろい。西武秩父駅の駅前にあった「そば福」は池袋行き特急の最終便まで店を開けていてくれたのでずいぶん利用させてもらった。その店は08年2月に閉じて、今は駅から30分ほどのところの本店(TEL0494-22-1610)のみの営業になったので、いま代わりに利用しているのは駅から見て左手にすこし奥まった「和味処(なごみどころ)えん」。そばやでもあるが、夜は酒と旨いもの、という店になる。営業は夜10時までなので、電車があるうちはやっているという安心感に加えて、きちんとした秩父品質のそばを食べさせてくれる。

和味処えん」(TEL0494-22-2818)11:30〜14:00/17:00〜22:00(ラストオーダー21:30)、木曜定休。


秩父が初めてという人が多い場合には秩父神社並びの「武蔵屋」に行くことが多い。秩父鉄道の秩父駅で降りて秩父神社にお参りするなどして観光気分に切り替わる。午後7時までやっているというのが秩父では遅いほうなので、その営業時間に助けられることが多い。食べ終わったら古い商店街のタイル張りの道をたどって、御花畑駅から西武秩父駅へとのんびり歩ける。秩父鉄道の秩父駅から西武線の西武秩父駅まで歩くので、秩父の中心街を見た気分になる。

武蔵屋」(TEL0494-23-1818)11:00〜19:00、火曜定休。


うんと遅くまでということでは、秩父神社正面右手の路地を数軒入ったところにある「そば処・入船」がいざというときの押さえになる。しかもこの店は昭和初期に秩父銘仙の買い継ぎ問屋として建てられた木造2階建てで、国の登録有形文化財に指定されているという。実際にはそんな由緒ある建物とは気づかないけれど。

そば処・入船」(TEL0494-24-5691)11:30〜14:30/18:00〜23:30(そばがなくなり次第終了)、水曜定休。


西武秩父駅を出て大通りを右手に行くと「手打ちそば・こいけ」がある。私の登山講座に参加していたそば好きが足繁く通ったというけれど、午後3時には終わってしまうのでなかなか行けなかった。1泊2日の両神山の往き道にこいけでそばを食べる計画にした。しかしそばだけに特化したシンプルさは、そばの味だけを求めるのではない私たちには、あまり記憶に残らなかったようだ。秩父には「やなぎや」という老舗もあるが、こちらも時間的に行けた試しがない。

「手打ちそば・こいけ」(TEL0494-22-1610)11:00〜15:00(ラストオーダー)、火曜・水曜定休。

やなぎや」(TEL0494-22-1646)11:00〜16:00(売り切れ次第終了)、木金が定休だがどちらかの曜日に月1回営業。


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