1.長さの調節・肉体化
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| ■ダブルストックの肉体化――2008.4.22 奥多摩の川乗橋バス停から川苔山(1,363m)へ向かう道。渓流沿いの道は変化に富んで楽しいが、その変化に対してダブルストックがあると安全性が飛躍する |
ダブルストック(ストックをポールと呼ぶ例もあるけれど完全に同意語)を購入して取扱説明書を見ると、登り下りなど、状況に応じて適当な長さに調節して使うように指示される。
短く使いたいときのためにグリップ下にラバー状の巻き物をしてシャフトも握れるようにした製品も出ている。従ってダブルストックは下りで長めに、登りで短めに持つのが基本と理解されるのが一般的となっている。
なんでそうなったのかわからないが、私はその最初の一歩でボタンを大きく掛け違えてしまったダブルストックの道具としての不幸を、ここでは訴えておかなければならない。
ごく簡単にいえば、ダブルストックをダブルステッキ、すなわち2本杖とイメージした人と、スキーストックのウォーキングバージョンと考えた人との違いなのだが、その進む先は大きくちがう。
最近、ノルディックウォーキングというダブルストックを使った歩き方、すなわちノルディックスキー(歩くスキー、走るスキー)の平地地面でのトレーニングシステムが一般向けに登場したが、私の考え方はもともとスキーストックの使い方に由来しているので、ストックと体との関係は、こちらに近い。
ここで比較対照としている杖は頭で使うものだから、基本的に体の前方に出す。視野の中で、頭の命令によって使われるためだ。ところがストックはスキーストックがその代表だが、体の一部となって、反射神経によって、腕を長くした状態での仕事を担う。頭が見ていないところでの仕事の質が重要になる。
オートバイを例に引けば、ソファーに座ってハンドルを左右に動かす感覚のアメリカンタイプ(クルーザータイプ)と、前傾した体を左右に倒すことによって曲がろうとするヨーロピアンタイプの違いに近いかもしれない。たとえていえば杖はアメリカン。未経験者でもイメージできる。老人が失った機能を補うのに、誤解の生じる隙のない単純明快な道具となっている。
それに対してダブルストックは、元気な人が、そのエネルギーをさらにうまく引き出そうという野心によって選ばれた道具といえる。オートバイが傾くことによって方向を変えるという、未経験者には想像外の動きを引き出す能力を潜ませている。
ストックは、それが視野の中にあろうがなかろうが、反射神経によって使われるように肉体化されるし、スキー競技に見られるように、斜面が変化しても長さを変えようなどと考えずに、姿勢を変化させることで対応する。その姿勢の変化をも、ストックが補佐できればいいわけだ。
登り下りで長さを変えるという考え方は、歩き方を変えずに補助的な手段を講じるということになる。だから登りでは短く、下りでは長くしたくなるのは当然の帰結といえる。しかし多くの道具は使い手の体に対して新しい要求をする。スキーとスノーボードではまったくちがう体の動かし方を求められるのと同じだ。
この技術講座の最上級のところでダブルストックのシングル使用を語る予定だが、ベテラン登山者が岩場や急斜面で杖を巧みに使うのとかなり重なる。しかしダブルストック論としては、そのずっと手前で利き腕とそうでない腕との能力をできるだけ対等に近づける努力を重視する。岩場でのシングル使用はあくまでも「谷側」使用だから、左右どちらで使っても同じ能力であることを求めなくてはいけない。そのように左右のバランスを崩さないように歩くことをうながす道具として、ダブルストックは初心者に対しても体への負担を大幅に軽減する効果がある。
結論的にいえば、ストックの長さは変えない。とりあえず、握ったときに手首と肘が水平になる長さを標準としておきたい。下りでは深い前傾姿勢を要求される長さだ。ストックの長さを調節するというわかりやすさより、同じ長さのストックをどこまで大きな範囲で使うことができるかという、体の使い方を広げる考え方のほうが柔軟で合理的といえるだろう。










