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毎日が山歩き 案内人 伊藤幸司(糸の会・登山コーチングシステム)  50歳を過ぎてからでも楽に山歩き、愉しく山登り、のんびり山遊びが楽しめる毎日を紹介します。

講座 2008.9.11更新  

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【講座63】塩と砂糖


塩と芍薬甘草湯

■足がつっただけではなかった――2007.8.25
西丹沢の大室山で足がつった人が出たが、どうもようすがちがう。ガタガタと震えだした。低体温症というべきものが出たようだ。もちろんここぞとばかり、実験的手当をいろいろやったけれど

このタイトルを見て、何のことかすでにお分かりの方が、あんがいたくさんいらっしゃる……ということを感じながら書いていきたいと思う。

私はいま、ザックの中にひとつかみの塩と、漢方薬の「しゃくやくかんぞうとう」(ツムラの68番)を常備している。

参加者のなかに医師がいて、最近巷ではこんなクスリに人気があるけれど試してみない? と渡されたのが最初だった。すぐに別の参加者から何袋かいただいた。

それで、足がつりそうな人が出ると飲んでみてもらっているのだが、結論からいうと、効くか効かないか分からない。

効くはずがないでしょう……という声も聞こえてくる。このクスリを使う人は、用心のために出発前に飲んでくるという。

その医師も、毒にも薬にもならないものを患者に飲ませたりする人だから、使うならいかにも効くように使いなさいということだろうとは分かっているけれど、私はいつも疑い深い表情で試している。

足がつるという事件は、私にはあまり重要なことと思えない。しばらく休憩時間をとって、そのあと様子を見ながら行動すればいいからだ。

足がつることの原因は筋肉疲労と考えていいけれど、冷えがあったり、まれに汗をかいたときには血液中のナトリウムやカリウム不足が原因となると考えられている。塩はもちろん塩化ナトリウムの補給用だ。

塩については多くの人が持っていて、だれかの足がつると何種類かの塩が出てくる。岩塩だの、天日干しの塩だの、味自慢の塩だの……だ。

たしかに、大汗をかく状況では、水分補給が重要だ。これは熱中症の危険を避け、心筋梗塞などの発生を抑えるためにも、リーダーは本気で心配りしなければならない。とくに熱中症は山で発症したら死亡率のきわめて高いものになるけれど、リーダーが注意を怠らなければ危険はほとんど回避できる。すなわちリーダー責任の病気と考えるべきものだ。


そして水分補給によって、汗がたっぷりと出、血液中からナトリウムなどを溶かし出したとすると、その補給が必要になる。

塩は、その不安に応えてくれる。ひとなめしておいしいと思ったら、一口補給するのはまちがいなくいいことだ。

それをスマートに、かつ効率よくしたいひとは、スポーツドリンクを用意している。運動によって失われるもの、汗で流れ出してしまうものを合理的に補給できる。

話が芍薬甘草湯からどんどん離れてしまったけれど、もうひとつ加えておきたい。私は山で飲む水は家の水道の蛇口からとった水道水と決めている。夏も冬もまったく同じにしているので、夏はどうしたってぬるい水、冬にはマイナス10度Cぐらいになると薄氷が張ったりする。まったく同じ水を透明のポリタンクから飲むことで、その日の水の消費量をなんとなく計っている。

たぶんそれが水の基準消費量と考えられる。環境の変化によって消費量が変わることもあるだろうが、ある人固有の問題として、消費量が異常値を示すこともあるだろう。あまり正確ではないけれど、自分自身をひとつのモノサシと考えておけば、環境と行動内容に異常性の原因があった場合に、なんとなくキャッチできる……と考えている。

有効かどうか分からないけれど、そういう客観性から見ていると、芍薬甘草湯を予防薬として出発前に飲むというひとは許し難い。クスリを飲んでからだにどれほどのストレスが溜まろうが、大したことないだろうし、どうでもいいけれど、からだに訊く前に頭が勝手に危機管理を進めてしまう警備優先主義が危険なのだ。足がつるという症状があらわになる前に、何段階もの前兆を見せてくれるはずのからだに目を向けようとしない。

足がつっても、私などはほとんどあわてない。本人がすこしつらい思いをすることと、チームがちょっと余分な時間を必要とする程度で、終わってしまうことだから。

そのときに、親切に贈られた塩をひとなめしておいしいと思ったら、それは「からだに訊く」範疇のことだと思う。

スポーツドリンクにも総合栄養剤みたいによさそうな成分が全部入れてあるようなものもあるという。飲み続けていると思わぬ栄養素が過剰摂取になったりする危険性がある。すくなくとも、からだに染みわたるような感じがなくなったり、味がしつこく感じられたりするときには、からだが必要としていない……かもしれない。


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