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毎日が山歩き 案内人 伊藤幸司(糸の会・登山コーチングシステム)  50歳を過ぎてからでも楽に山歩き、愉しく山登り、のんびり山遊びが楽しめる毎日を紹介します。

講座 2008.8.28更新  

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【講座62】雷の観察


大例外

■そのときの、雨の降り始め――2008.7.23
谷川岳山頂部で雨がきた。あわてて雨具をつけたけれど、いつ頭上で雷が鳴るのか、そちらのほうがこわかった

今年(2008年)の7月23日に谷川岳に登った。技術的なターゲットを西黒尾根の下りとしたので、往路はロープウェイと観光リフトで天神峠まで上がった。晴れていれば谷川岳をきちんと見たうえで登りたいと考えたのだが、山頂部は濃いガスに包まれていた。

天神尾根の登りは別にどうということはなかった。下界はそれなりに見えていて、山頂部だけがガスの中……という状況は変わらなかった。

肩の小屋でトイレ休憩をして最後の詰め。展望はまったくないので、記念写真のために山頂をめざすといった気分で登ると、雨がパラついた。降ってくるかなと思ったが、それで終わり。

トマの耳を素通りして、まずはオキの耳へ向かうと、山頂がすぐ目の前というところで雨が来た。ポツン、ポツンときた雨粒が大きかった。すぐに雨具の着用を指示したので、早い人は間に合ったが、モタモタした人は土砂降りの中でようやく着終わった。

山頂はもう30秒といったところだが、雨具をつけ終わるのを待ちきれないように下山にかかった。

上を見上げても、どんな雲の下にいるのかわからない。ずいぶん注意していたけれど、雷鳴は聞いていない。しかし、大きな雨粒は、大きな雹が溶けて水になったように思われた。頭上には巨大な上昇気流があると考えるのが常識だ。……ということは、突然、真上でゴロゴロ、ドッカンと来るかもしれない。

森林限界を越えたところで、雷の気配を感じたら、一刻の猶予もなく逃げると私は決めている。どう考えても、頭の上に積乱雲がある。逃げ切れるかどうかだ。夏山の、最悪の状態にはまってしまって、私は恐怖感さえ感じていた。

肩の小屋に逃げ込む前に、遠くで雷鳴が聞こえたが、頭上にそびえ立っているはずの雲からはなんのシグナルも送られなかった。

小屋でとりあえず30分休憩ということにして、あたたかいコーヒーを頼んだ。濡れた西黒尾根の下りは中止とした。追われるような気持ちで岩場を下るのは良くない状況だから。

雨も上がり、天神平へ戻ろうと歩き出すと、すぐにまた雨が来たが、今度は本格的だった。滝のような雨が、たちまち登山道を川にした。それでも西黒尾根をダブルストックで安全に下るという技術課題があったので、登りでその準備をしてきた。豪雨とはいえ、天神尾根の下りでは、歩き方に不安を感じさせる人はいなかった。

雷鳴も、今度は聞こえた。進行方向の右手遠方と左手遠方。近づいてくるようすもなく、やはり頭上で突然ピカッとくる危険含みではあったが、周囲が暗くもならず、冷たい風が吹き下ろしてくることもなかった。

熊穴沢ノ頭避難小屋で休憩したら、私の心配も氷解した。あとは樹林になる。雷が襲ってきたとしても、危険率はうんと低い。

私にとって新しい体験だったが、その後で、この日の雷雲が20年来初めての変則的なものだったということが明らかになった。

詳しいレポートは私のホームページの速報欄【谷川岳――2008.7.23(水)】に載せているので割愛するが、午後2時ごろ、私たちが前方左手に聞いた雷鳴でロープウェイが止まったらしい。雷で止まることは珍しくないそうだが、この日の雷雲は動こうとせず、午後7時直前になって、電気を使わない非常用の方法で、足止めされた乗客を降ろし始めた。

通常10分のところを45分かかって下る間に、同乗した社員にいろいろの話を聞いたが、入社して20年間、雷雲が5時間経っても動かないのは初めてだという。私たちは稲光の中をノロノロと下っていった


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