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毎日が山歩き 案内人 伊藤幸司(糸の会・登山コーチングシステム)  50歳を過ぎてからでも楽に山歩き、愉しく山登り、のんびり山遊びが楽しめる毎日を紹介します。
日本365名山  
第15回 天城山
■三筋山から望む天城山の稜線―2006.1.24
ほぼ南に位置する三筋山から望む稜線上には、右端の万二郎岳から左端の最高峰・万三郎岳まで、核心部がきれいに見えた。
 
天城山(あまぎさん……万三郎岳/ばんざぶろうだけ)―― 1,406m
万二郎岳(ばんじろうだけ)―― 1,290m
江戸時代に幕府林、第二次世界大戦までは皇室の御料林として厳しく保存されたことから天城七木(マツ、スギ、ヒノキ、モミ、ケヤキ、ツガ、サワラ)や天城九木(クスノキ、カシを加える)の巨木が残された。その中にアズマシャクナゲに近いアマギシャクナゲ、トウゴクミツバツツジ、アセビがみごとな花を咲かせる。
2005年は全国的にシャクナゲの当たり年だったところから天城山、甲武信ヶ岳、屋久島、日光黒檜岳、秋田駒ヶ岳と集中的にシャクナゲを見に出かけたが、天城山のシャクナゲは全国有数といっていい。とにかく木が大きいのだ。
しかし、シャクナゲの時期には天城高原ゴルフ場バス停から万二郎、万三郎を経て周回できる「シャクナゲコース」が大にぎわい……だったのだが、ここ2年ほどはルートの一部に崩落があって周回ができなくなり、みなさん往復したためににぎわいはかなりのものとなっていた。今年からはまた周回できるという。
しかし、大きな問題が……。伊東駅から天城高原ゴルフ場への路線バスが廃止されて、ゴルフ場やその手前の伊豆高原の東急の宿泊施設を利用している人には毎日かなりの便数のシャトルバスが走っているが、一般客の利用は不可。したがってマイカー利用の周回プランか、タクシー利用しか方法がなくなった。もちろん東急のホテルに泊まれば片道500円という格安シャトルバスを利用できる。

アプローチ
東京からは伊東−伊豆急下田と修善寺に二方向分離型の特急・踊り子号/スーパービュー踊り子号が利用できる。もっと急ぎたい向きには熱海か三島まで新幹線。小田原から小田急線特急で新宿へ出るという方法もあり、東海道本線の普通/快速なども便数が多いので、足にこまるということはない。
問題は伊豆半島内部の移動で、伊東駅−天城高原ゴルフ場行きの路線バスが廃止になったので、バスの利用を優先的に考えられるのは修善寺駅−天城峠−河津駅で午前8時台から午後5時台までおおよそ1時間間隔で利用できる。 運賃は修善寺駅−水生地下・天城峠ともに1,060円、修善寺駅−二階滝が1,120円、修善寺駅−河津駅が1,650円で、天城路フリーパスは1,900円(2日間有効)。天城峠は河津駅から3分の1ほどの位置になる。
伊東駅からのタクシーは伊東交通(TEL 0557-37-2010)、伊東合同自動車(TEL 0557-37-2056)、東豆自動車(TEL 0557-37-3511)などがあって、天城高原ゴルフ場まで小型で約6,000円、中型で約7,500円、ジャンボタクシーは約12,000円。筏場林道入口もほぼ同額と考えていい。
修善寺駅からのタクシーは伊豆箱根交通(TEL 0558-72-1811)、寺山タクシー(TEL 0558-72-2129)、東海交通(TEL 0558-72-0292)などがあって、筏場林道入口からのメーターは小型約4,000円といくらか安い。

ルートシミュレーション

この地図の範囲は国土地理院1:25,000地形図、横須賀15号-2+4(あまぎさん)、静岡3号-2(ゆがしま)、静岡4号-1(ゆがの)、でカバーされる。
赤い○印は標高50mごとに置いた半径50mの円。青い◇印は山頂から約500mごとの水平距離。○印の間隔によって登山道のある斜面の傾斜を把握できる。
さらにこの地図の特長は、○印と◇印をどちらも1個(1ポイント)7.5分(2個で15分、8個で1時間)と仮定して、時間とエネルギーを概算できること。
天城山 ルートマップ

【研究15】天城山
アマギシャクナゲとトウゴクミツバツツジ
■登山道のシャクナゲトンネル―2005.5.24
ふつうシャクナゲの木はひょろひょろと、驚くほどひ弱に見える。ところが天城山では堂々とそびえ立つ。

 伊豆半島はけっして大きな半島ではないけれど、その核心となる天城山脈には深い森が残されている。縦走路としてポピュラーなのは、天城峠から八丁池―万三郎岳―万二郎岳とたどり天城高原ゴルフ場へと下る部分だ。
これは日の長い季節であれば、東京を早朝に出ると明るいうちになんとか山を下ることができる。けれど、できれば伊豆の温泉宿に泊まって、ゆったりした気分で朝から登るほうがこのルートには合っている。


 日帰りの場合には最高峰の万三郎岳を中心にボリュームを半分にしたい。そうすると天城山は「軽めの日帰り」になる。首都圏からなら帰りがけに風呂に入って、おいしい魚を食べて帰れる。
旬の時期は、なんといってもシャクナゲのころ。その時期にはアセビのトンネルがいくらか時期遅れになっていて、ヤマザクラも爛熟の域なのだが、万三郎岳から万二郎岳の稜線では南斜面がトウゴクミツバツツジ(東国三葉躑躅)、北斜面がアマギシャクナゲ(天城石楠花)とかなりはっきり区分けされる。
そしてその稜線が万三郎岳の東の肩に当たるところ、小さな案内板がブナの巨木群を教えてくれるあたり一帯に堂々たるシャクナゲの木が何本も枝を広げている。花芽がたくさんついた年には、シャクナゲのみごとな乱舞となる。
しかしそれは単純な南北問題ではなくて、万二郎岳からほぼ真北に下って天城高原ゴルフ場に出る道ではシャクナゲはほとんどなくて、ミツバツツジが主役となっている。よくさがすとシャクナゲの花がひっそりと咲いているが。
万三郎岳から天城峠のほうへのびる稜線を歩くと、しばらくは北側斜面にシャクナゲの木が点在している。なかには驚くほど白い花を咲かせているものもあるが、かなり下の方まで、広い斜面に散在しているという感じ。ところがそれはすぐに変わって、ブナ林にヒメシャラという天城山のもうひとつの表情が現れてくる。シャクナゲは消えてなくなるわけではないが、主役の座からは降りてしまう。
万三郎岳の山頂から一文字に北へ下るのが涸沢分岐への道だ。これこそ北斜面のシャクナゲ林へと一気に下っていく道で、シャクナゲの木そのものが大きいというよりも、巨木、古木を飾るようにシャクナゲがアクセントをつけている。

 標高1,100mほどだと思うのだが、涸沢分岐から等高線に沿ってほぼ水平にトラバースする道が天城高原ゴルフ場バス停へと続いている。その出口手前の分岐(四辻)から登れば万二郎岳だから、水平トラバース道は、万三郎岳―万二郎岳の稜線に対応する北斜面横断の道といえる。
伊豆市の案内図によると、その、天城高原ゴルフ場バス停を起点にして、万二郎岳―万三郎岳をぐるりと一周するのが「シャクナゲコース」となっている。私のシミュレーションマップによると一周わずか33ポイント(8ポイント=1時間として約4時間)のボリュームの中に穏やかな登り(逆回りなら下り)あり、稜線あり、急な下り(登り)あり、緑深いトラバース道ありという変化に富んだルートを楽しめる。しかもそれがアマギシャクナゲの核心部となっている。初心者にも歩ける周回路として、シーズンには大型バスが何台も登山者を運び上げる。
そのシャクナゲコースが2003年に集中豪雨で破壊された。以後通行止めになっていたが、ようやく今年(2006年)の5月15日に開通。ふたたびたくさんの人が訪れるようになるだろう。


 天城峠には新天城トンネルと旧天城トンネルがあって、その上に天城峠の縦走路がついている。しかしそこから八丁池に登る「上り御幸歩道」は崩落事故によって通行止めが続いているとのこと。そこで北側の水生地下バス停から入る「下り御幸歩道」と南側の寒天林道が選択肢となってくる。
寒天林道は二階滝バス停のところから旧道の寒天橋に入り、そこから林道となる。そしてこの林道、季節によって昭和の森会館からのバスが八丁池口バス停まで入るのだそうだが、バス専用道路ということでゲートが閉じられている。バスを利用しない限り長い道を歩かなければならないが、林道だから暗くても安心して歩けるということで、エスケープルートとして覚えておきたい。
現在通行できる登山道としての「下り御幸歩道」は水生地下バス停から20ポイント(8ポイント=1時間として約2時間半)で八丁池に至る。八丁池から万三郎岳までは21ポイント(約2時間半)、さらに万二郎岳まで10ポイント(約1時間15分)となり、下って天城高原バス停までが10ポイント(約1時間15分)となる。下りではもちろん時間は短縮できるが、順調なら予備時間が増えていくという考え方をしておくと、いい場所でゆっくり休むとか、疲れ気味の人を休憩の取り方でうまくリードするとか、ペースメーカーのやりくりがいろいろ可能になるので、「予算」としての時間計算はぜんぶ登りでやっておいたほうが好ましいと考えている。
ともかく天城峠から天城高原ゴルフ場までの縦走は(どちら方向であれ)7時間半という予算になる。健脚なら休憩もこれに含めていいだろうが、初心者がいる場合には昼休み分として1時間をこれに加えておくと安心かと思う。とくに下山後を路線バスに頼るときには、たっぷりとした予備の時間をもっていることが、焦って怪我をするなどの不幸を遠ざけるためにも重要だ。
この縦走、いちど河津桜の花見とセットにして3月にやったことがあるけれど、シャクナゲのない天城山はあまりパッとしないローカルな山という感じがした。

 ある時、タクシーの運転手から「カワコダイラ」という名を聞いた。不思議な風景が見られるという話だった。万三郎岳から八丁池方向へ9ポイント(約1時間)行ったところの戸塚峠から北斜面へと下っていく。万三郎岳―戸塚峠の稜線もみごとなブナ林が広がり、ヒメシャラの林もあって、独特の雰囲気をもっているが、急斜面を下って皮子平に入ると、たしかに不思議。特有の植物群落として保護されているのだそうだが、ブナの極相林に伸び悩みの貧相なヒメシャラが林立する奇妙な林相となっている。噴火口跡ということもあって地面のようすも自然というにはあまりにも人工的に思えたりして不思議空間を演出している。そしてよく見ると、岩陰に意外にたくさんのシャクナゲも見ることができる。
戸塚峠から下って、まっすぐ北に向かって進んでいくと筏場林道に出る。そこまでが10ポイント(1時間強)。林道を5〜6km下っていくとゲートがあって、タクシーをそこに呼んでおくことができる。6.5kmの筏場新田バス停まで出て電話を借りてタクシーを呼べば確実だ(バスはあまり期待しない方がいい)。
この、皮子平から筏場林道を下るというルートの利点は、伊東と修善寺の両方にほぼ等距離というところ。帰りに伊東温泉に立ち寄るか、修善寺温泉にするかを選べるという気分は悪くない。東海道新幹線を利用するなら熱海に出るか、三島に出るかという違いだ。ともかく、天城山縦走路のほぼ中央に魅力的なエスケープルートが見つかったと考えている。


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