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とうのだけ(1,491m) |
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小田急小田原線の秦野駅〜渋沢駅あたりから間近に見える山並みが丹沢山地だが、そこに見える稜線をおおよそ「丹沢表尾根」と考えていい。 |
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1,491mの塔ノ岳を中心に、右手(東側)に三ノ塔(1,205m)、大山(1,252m)が大きくそびえ、左手は鍋割山(1,273m)で一区切りという感じ。 |
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渋沢駅からかなり頻繁にバスが出ている大倉から一直線に塔ノ岳に登る登山道が大倉尾根で、いわば丹沢のメインルートとなっている。 |
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大倉尾根を登ると塔ノ岳でTの字に交差するのが表尾根だが、そのまま突き抜けて丹沢山(1,567m)、蛭ヶ岳(1,673m。丹沢最高峰)へと続く「主脈縦走路」もあるので、塔ノ岳は重要な十字路となっている。 |
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丹沢表尾根にはいくつもの山小屋があるが、年中無休で利用できる要の役を果たしているのが塔ノ岳山頂の尊仏山荘。この山小屋を目当てにして登ったり、緊急避難的な存在として意識しながら登ったりすることで、丹沢表尾根は四季を通じてさまざまなレベルの登山者に開放される。 |
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塔ノ岳への登山口へは小田急小田原線藤沢駅北口から毎時2本程度のバスが出ている大倉が起点となっている。すぐに登り始めるのが大倉尾根だが、沢沿いの林道をたどって奥に入るといくつもの登山口があらわれる。 |
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バスが利用できるのは東のヤビツ峠で、平日は1日2往復、土休日は4往復ほどあって、登山バスの趣となっている。時間に縛られたくない場合には、途中の蓑毛までなら毎時2往復以上のバスがある。 |
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タクシー利用で便利な登山口はヤビツ峠からさらに1.5kmほど先の富士見山荘(秦野駅から約4,400円)があり、西の端では県民の森(渋沢駅から約2,200円)がある。タクシーは入らないがマイカーなら利用できるのが、水無川を遡った戸沢出合、あるいは四十八瀬川を遡った二俣で、駐車スペースもある。 |
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危機管理用としてのタクシー呼び出し電話は、秦野駅、渋沢駅共通で
秦野交通( TEL 0463-81-6766/ TEL 0120-816766)、神奈中ハイヤー( TEL 0463-81-1801)
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この地図の範囲は国土地理院1:25,000地形図、横須賀13号-3(せきもと)、静岡1号-1(ごてんば)でカバーされる。 |
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赤い○印は標高50mごとに置いた半径50mの円。青い◇印は山頂から約500mごとの水平距離。○印の間隔によって登山道のある斜面の傾斜を把握できる。 |
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さらにこの地図の特長は、○印と◇印をどちらも1個(1ポイント)7.5分(2個で15分、8個で1時間)と仮定して、時間とエネルギーを概算できること。 |
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塔ノ岳へと登る大倉尾根はかつてバカ尾根と呼ばれた。標高差約1,200mの登り一辺倒(ほんの一瞬小さな下りがあるけれど)のこのルートが、高校・大学の山岳関係のサークルでボッカ(歩荷)訓練に使われたのは、キスリング型ザックの全盛時代のことだ。
その後、ここでは登山道補修用の小石を運び上げるボッカ駅伝(丹沢ボッカ駅伝競走大会)が1987年以来行なわれてきた。
ボッカ駅伝は県立戸沢公園(標高270m。大倉バス停)をスタート地点として、見晴茶屋(標高610m)、駒止茶屋(標高900m)、堀山の家(標高950m)を中継点とし花立山荘(標高1,300m)をゴールとする4区間となっている。
メインはボッカ重量40kgで、ほかに20kgと10kgのクラスがもうけられている。
私が提案するルートシミュレーションでは1区=大倉バス停→見晴茶屋=10ポイント=1時間15分、2区=見晴茶屋→駒止茶屋=8ポイント=1時間、3区=駒止茶屋→堀山の家=3ポイント=24分、4区=堀山の家→花立山荘=9ポイント=1時間8分と見積もっていく。
ところが16回大会までの最高記録を見ると1区=28分35秒、2区=22分40秒、3区=9分05秒、4区=25分37秒となっている。40kgを運び上げての時間だからすごい。あまりに超人的に見えるので、10kgの女子の記録を見てみると1区=22分03秒、2区=15分36秒、3区=7分10秒、4区=18分59秒となっている。やっぱりすごい。コースタイムについては今回「講座」のほうで考えてみたい。
じつは、大倉尾根の登山道で見てもらいたいのは「道」の深さだ。善良な登山者が上り下りするだけで、道は川となる。川はえぐられ、ぬかるみを嫌う登山者の踏みつけで周囲の緑がはげていく。そういう登山道の「おだやかな破壊」が驚くほど大規模な変化となって蓄積している。なにしろ、登山者を囲い込む壁はときに背丈を超えている。
ボッカ駅伝が道普請用の小石を運び上げるかたちをとるのは、首都圏有数の若い地形の山岳である丹沢の傷つきやすい登山道を象徴している。その石を使った補修工事もまたボランティアの手によって行なわれるというが、丹沢全山で登山道は自然崩落とせめぎ合っているし、登山者によるダメージにも耐えている。 |
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まろやかな山頂の塔ノ岳を遠くからながめてすぐに探せるようになったら、丹沢にかなり精通してきた証拠と考えていい。しかしいったん特徴をとらえてしまえば、見分けるのは簡単だ。あまり際だっていない丸みのてっぺんにちょこんと見える建物によって塔ノ岳と確認できる。山頂には2軒の山小屋があるけれど、1軒は廃屋なので尊仏山荘(と隣接する旧尊仏小屋)がその役を担っている。
山小屋はその山の登山の大衆化と密接につながっている。『女たちの山小屋物語』(鷹沢のり子・1998)によると、塔ノ岳山頂には昭和14年に横浜山岳会が建てた尊仏小屋があったが、朝鮮半島から引き揚げてきた山岸猛男さんがそれを改修してスズタケ加工を試みたという。その小屋は小田急電鉄に買い取られて昭和24年に新築、山岸さんが管理人となった。さらに県営の尊仏山荘も隣接して建てられ、結局、尊仏小屋(50人収容)も尊仏山荘(150人収容)も山岸さんの管理になり、現在は娘婿の花立昭雄さんがにこやかなひげ面で迎えてくれる。
尊仏山荘は山頂の小屋なので水はないが、数分下ったところに水場がある。ストーブとベンチ+テーブルのある土間空間での休憩はお茶(300円)か「淹れたて」のコーヒー(400円)を頼むだけで気持ちよくのんびりできる。これが日本の山小屋の(原則的な)「休憩」だが、尊仏山荘ではスタッフと休憩客との間に微妙な距離感をいつも感じる。
軽くて好感の持てるつばぜり合いはひげの花立昭雄さんの持ち味だろうか。憶測を交えていえば、山荘のスタッフは登山者の力量と予定ルートをちらりと推し量っているようだ。朝の8時ごろにのんびりコーヒーを飲んでいて「蛭ヶ岳から東野へ下る」といったら、「じゃあ早く出なきゃ」と押し出された。日没時刻とメンバーの足並みを見ているという感じがした。
夕べは鍋割山荘に泊まったというと、「夕食は何だった?」と聞かれたことが2度あった。知ってるくせに。あちらは水炊きの鍋が名物で、ときに「鍋焼きうどんでごめんなさいね」というのに対して、尊仏山荘は「いつでも具なしのカレー」と私たちはつぶやいていた。具はだれが食べたのだろうか? というのを真剣に調査した泊まりもあった。
カレーライスは、かつては山小屋の定番でまずい飯を何とか食わしてしまおうという魂胆が見え透いていたのだが、いまではもちろんそれでは通用しない。尊仏山荘のカレーライスは下界でも十分に通用する。お代わりも自由にできる。ただ、固形物が見あたらないのだ。今回ホームページで確認したら「疲れた方でも食べやすいように具が溶けるくらい煮込んでいます。おかわりも気軽にお申し付けください」とあった。ああ、よかった。「具のないカレー」でみなさんにおすすめしにくい山小屋ではなかったのだ。頑固に一品、夜はカレーとサラダ、朝はおでん定食と決めながら、自信を持った定番としているあたり、なかなかのものといえる。ちなみに朝食のおでん定食には「塩分と水分が適度に同時補給できます」とある。
この尊仏山荘があるおかげで、丹沢の表尾根を日帰りで歩く人々や、夜と朝のすばらしい展望を期待して登るひとたちの安全性がどれほど高められていることか。山小屋がもっている避難小屋としての要素を、尊仏山荘はホームページにこう書いている。
「当山荘は通年営業です。完全予約制ではありませんが、事前に電話を下さると助かります。特に10名以上の団体で食事付の宿泊を希望される場合は、準備の都合がありますので、前日までに連絡願います。なお宿泊をお取り止めになってもキャンセル料はいただきませんが、その旨はお知らせください」
ちなみに山小屋泊まりの基本的な料金計算法だが、尊仏山荘では次のようになっている。素泊まり4,000円、朝食付き5,000円、夕食付き5,000円、2食付き6,000円、2食+弁当付き7,000円。日帰りの場合にも予備費として1万円もっていると、小屋に泊まって、翌朝最短の登山口でタクシーを呼ぶことができる。 |
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塔ノ岳から稜線を西に向かうと鍋割山に至る。鍋割山も顕著なピークではなく、ここに山小屋がなければ休憩展望地のひとつという程度のところだ。
そこに、雲仙・普賢岳の麓で育って、高知大学山岳部で活躍し、一流登山家を目指していた草野延孝さんがやってきた。1948年生まれ、団塊の世代だ。東京で就職したが、山を中心にした生活を送りたかった。1976年、27歳のとき、丹沢に40以上ある新旧・公私・大小の山小屋のひとつ鍋割山荘に小屋番の仕事を見つけ、海外遠征登山のチャンスをねらっていた。
そしてエベレストの無酸素登山へのステップとなるインドへの遠征で遭難、足の指を7本切断した。ヒマラヤのダウラギリ遠征で復活を遂げたが、35歳で結婚。山小屋経営に本腰を入れることにしたのだった。下界で仕事をしながら山小屋改築資材を夜間ボッカして、たったひとりで現在の鍋割山荘をつくりあげた。丹沢のボッカ駅伝競走はその草野さんに刺激を受けた人々によって始められた。
草野さんは学生時代に四国の石鎚山で始めたボッカのバイトから現在まで、ボッカ人生を続けている。水を下から運び揚げ、ゴミはすべて運びおろすという究極の山小屋経営をスーパーマーケット店員との二足のわらじで続けてきたが、名物料理の水炊きは水っぽくて腐りやすい食材を鍋一杯に盛り上げるという意地の料理となっていた。
最近は山小屋経営に専念できるということで夜間のボッカは少なくなったと思われるが、ひとりの男が恵まれない環境を逆手にとって固定客を引きつけるという昭和30年代の登山ブームを彷彿とさせる独力開発型山小屋として、鍋割山荘は知られている。
登山口にあたる林道終点には大小各種のペットボトルに入った水が置いてあって、宿泊客は自発的にもてる分だけもつというしきたりになっている。最初は正直ちょっと嫌味に感じたけれど、草野さんの人柄にふれると、なんとなく自分の分の水ぐらいは運びあげたいという気持ちになる。
登山道にしても、草野さんは自分で利用しながら補修している。登山者が必要悪として破壊する登山道をどのように守っていくかについて、草野さんから聞くべきことは多い。とにかく肉体派にして哲学的なおやじさんだ。 |
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市街地を足元に見ながらの縦走が丹沢表尾根の醍醐味だ。とくに冬の雪の後などは、白い稜線を歩きながら富士山と同行するというぜいたくも味わえる。海に目を転じれば江ノ島があり、伊豆大島がある。熱海の沖には初島。海辺の山の大きな空が最大の魅力かもしれない。
私は朝日カルチャーセンター千葉で3度、この表尾根縦走を(日帰りで)試みたが、ヤビツ峠先の富士見山荘を出発点として西に向かって、まだ1度として塔ノ岳には到達できていない。千葉駅からさらに1時間向こうのひとが参加できるスケジュールだと、行者ヶ岳を越えるのが精一杯。それでも晴れた日の稜線歩きは開放感に満ちあふれたものになる。健脚の人たちは朝のバスでヤビツ峠に登り、二ノ塔、三ノ塔、烏尾山、行者ヶ岳を経て塔ノ岳。そこから大倉尾根を下るか、鍋割山から下るかという完全日帰りルートをとっている。あるとき鍋割山荘泊まりの予定で二俣から後沢乗越経由という最短ルートをとったのだが、大倉からの林道で何人かが道を間違えたトラブルでようやく二俣にたどりついたら、横浜在住の仲間がヤビツ峠から鍋割山を経て下りてきた。こちらはまだ登山口までいっていないというのに。丹沢はヒマラヤに遠征する一流登山家のトレーニングの場所でもあり、初心者からほんとうのベテランまで、ありとあらゆる登山者がさまざまなスピードで歩いている。どこから下っても足元に市街地があるというロケーションは、関西の登山家が六甲山で育つのと似ている。
私の場合、尊仏山荘は北に向かって丹沢山から三峰尾根を下ったり、蛭ヶ岳から姫次を経て東野へ下ったり、檜洞丸へと足をのばしたりする中継点として利用することが多く、山小屋泊まりの体験バージョンとしては平日なら貸切同然になる鍋割山荘を選んだりする。最近では時間に余裕のできた草野さんとゆっくり話すのも楽しい。 |
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丹沢の山小屋は原則として週末営業と考えておくのがいい。それも常連客を相手に営業しているという感じのところが多く、山小屋の権利を失わないために無理矢理存続させているという感じのものもあって、私はあまりよくわからない。
大倉尾根の大倉高原山の家( TEL :0467-51-3731)は展望ベンチとおいしい清水があって、おやじさんがいれば器に凝ったコーヒーを味わえる。見晴茶屋( TEL
0463-88-1375)と駒止茶屋(TEL :0463-88-3186)はよくわからない。堀山の家(TEL :03-3936-9536)は最近たまたま改築開店みたいなにぎやかさの中で休憩したが、仲間が集まってわいわいという感じだった。花立山荘(TEL :0463-88-2289)には泊まったことがある。
尊仏山荘(TEL :0463-88-1113)と鍋割山荘( TEL :0463-87-3298)については解説したが、表尾根を東にたどると木ノ又小屋(TEL :0463-88-1483)、新大日茶屋(TEL :0463-88-3171)、書策(かいさく)小屋(TEL :0463-82-3947)、烏尾山荘(TEL :0463-87-0021)と続く。まろやかで大きな山体を見せる三ノ塔の山頂に立派な小屋が建っているが、あれは避難小屋。書策小屋の渋谷書策おじいちゃんは女性に対してサービス精神旺盛で人気絶大だが、「もう登ったり下りたりできない」と語っていた。お元気だろうか。 |
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