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もういちどオーディオ 案内人:船木文宏
専門店からの情報発信  
2006.7.26更新
Refino & Anhelo注目のシステム 「試聴スペースの主役をクローズアップ」40.AIR TIGHTの真空管アンプでSonus faberのCremonaをドライブ
TUBE PREAMPLIFIER AIR TIGHT ATC-1 価格 315,000円(税込)
TUBE POWER AMPLIFIER AIR TIGHT ATM-300 価格 556,500円(税込)
SPEAKER SYSTEM Sonus Faber Cremona 価格 1,197,000円(ペア/税込)

オーディオの夢を貫く老舗の真空管アンプ

 真空管はオーディオファンに根強い人気があり、新聞にも1年に2、3回は「真空管の人気衰えず」とか「温かみのある音はやっぱり真空管」というような記事が載るし、真空管特集を組むオーディオ専門誌ある。少し歴史を振り返ってみると、日本の代表的高級アンプメーカーとして知られるアキュフェーズの創立が1972(昭和47)年。そのアキュフェーズの第1号モデル「P-300(ステレオパワーアンプ)」、「C-200(プリアンプ)」から今日までの全アンプ製品がトランジスタ・アンプである。この事例からわかるとおり、オーディオの素子としての真空管は、1970年代半ばには、ほぼトランジスタにその位置を譲ったと考えていいだろう。
AIR TIGHTの代表モデルでソナスのクレモナをドライブする

エアータイトのロゴとバイヤス・
チェックメーター
 しかし、これも日本を代表する高級アンプメーカーの一つであるラックスマンの、アメリカ市場開拓の前線にたっていた三浦篤氏は、1986年に独立してエイアンドエム社(以下A&Mと略記)を創立し、「エアータイト(AIR TIGHT)」というブランドを立ち上げた。そしてA&Mのアンプは第1号機「ATC-1(プリアンプ)」、「ATM-1(ステレオパワーアンプ)」からの全アンプが真空管アンプだ。1986年といえばCD登場後4年、素子の主流は完全にトランジスタとなっていたわけだが、三浦氏は、
「約半世紀前から、素子の時流は真空管からトランジスタへと移行しましたが、それは真空管の性能が劣っているからではなく、大量生産、コスト低減など、単に近代工業生産のシステムに合わなくなったことによるものです」
という。そして、
「オーディオ業界は量産化の商業ベースに流され本来の夢を見失ったのです。A&Mは本当に音楽を楽しみたいという人の
ために、真空管の優れた素子としての性能を生かして、使い込めば使い込むほど愛着が湧くような製品づくりを目指してきました。今後もオーディオファイルの感性を満足させる、夢のあるオーディオ製品の開発を、AIR TIGHTというブランドに託して、目標に定めた私たちの姿勢は不変です」
と力強くいう。
 エアータイトの真空管アンプは、洗練されたデザインと安心感のある回路で人気を集め、日本国内にとどまらず海外にも進出し、現在ではアメリカ、ヨーロッパ、アジアの13ヵ国で販売されている。海外での評価も非常に高く、アメリカのオーディオ専門誌「STEREO FILE」や「ABSOLUTE SOUND」の表紙を飾ったこともある。完全にデジタル時代に入ってからも、A&Mが一貫して真空管アンプを作り続けているのは、真空管に対する懐古趣味からでもなく、トランジスタに対して意固地になっているからでもない。真空管の良さを知り尽くし、トランジスタの能力を知った上で、優れた真空管アンプならデジタル時代にも通用すると確信して造り続けているのである。
 しかし現在は、大量生産に対応する真空管アンプのマーケットは残念ながらないし、性能のいい真空管の安定供給も難しい。素人が趣味で自作するレベルならともかく、エアータイトのような高級アンプを作ろうとすれば、供給先を確保しなければならず、製造技術に熟達した人材も揃えなければならない。A&Mがそのような困難を克服できているは、海外にも強力な人脈をもつ三浦氏のような存在があったからこそなのだ。
A&M第1号モデルのパワーアンプ「ATM-1」


ソナス・ファベールのスピーカー「クレモナ」
 オーディオへの愛情、自社技術への自信と執着、目標に対する信念の強さでは三浦氏に似ているのではないかと思われる、イタリアのフランコ・セルブリン氏によって設立されたソナス・ファベールのスピーカーを、エアータイトの真空管アンプでドライブしてみたいと思った。モデルはソナスが「クレモナ(CREMONA)」、エアータイトがプリアンプ「ATC-1」とパワーアンプ「ATM-300」である。クレモナについては、本欄の第9回「1階中央試聴スペースのソナス・ファベール」で紹介したので、参照してください。
 ソナスがクレモナの弦楽器製造職人とその作品に捧げる熱い敬愛の念は、三浦氏が真空管に抱く熱愛に通じるものがある。「ATC-1」はA&Mの記念すべき第1号モデルである。電源部、ライン部、イコライザー部を銅メッキシールド板で仕切り、ボリューム、スイッチ類はアルミ板でシールドして各部の干渉を排除し、ラインアンプ回路はトーンやフィルターの回路をなくして極力シンプルな構成にしている。薄型のすっきりしたキャビネットに納められているが、重量が7kgあるのは、相互干渉の排除や防振を徹底したためである。

 パワーアンプの第1号モデル「ATM-1」もレフィーノ&アネーロ店内にあり、バリバリの現役ぶりを聴くことができるが、今回は上級モデル「ATM-300」を選んだ。このアンプの最大の特徴は何といっても、名球として評価の高いウェスタン・エレクトリック(WE)社製の「300B」が出力段に使われていることだ。もちろん他社の「300B」と差し替えても使用できるのだが、ここはぜひWEの真価を味わっていただきたい。この名球の実力をフルに引き出すために、「300B」は自己バイアスによる純A級動作をさせている。バイアス管理はフロントパネルにバイアスチェックメーターが設置されているので容易だ。プリアンプと同様、各セクションの分離、防振対策も徹底し、プリント基板は一切使わず、一点ずつの手配線で組み上げられている。まさに、三浦氏がオーディオファイルの真空管に抱く夢を具現して見せたアンプである。  
A&M第1号モデルでもあるプリアンプ「ATC-1」


ウェスタン・エレクトリック社製「300B」を使用したパワーアンプ
「ATM-300」


濃厚な音色、繊細にな描写力は圧倒的
   
リヒャルト・シュトラウス。
「英雄の生涯」は写真をクリックすると、ジャケット写真が見られ、購入もできます。
  試聴ソフトは、飛び切りの名録音名演奏盤で、アンドレ・プレヴィン指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏による、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」(ユニバーサル ミュージック クラシック UCCT-4016)。シュトラウス30歳半ばの作品だが、すでに作曲技法は円熟している。作曲者の他の作品の断片を引用して自らの過去を回想し、さらに未来を見通すような内容は、あたかも大家の晩年の作品といったイメージだ。しかしこの曲の最大の魅力は、そのような表題音楽的なものを超えた、音楽そのものにある。言葉には置き替え難い「音の響き」そのものがこの作品の眼目なのだ。
 冒頭の低音弦とホルンによる生命力にあふれたメロディーが鳴り出してすぐに、「ああ、これはただものではない」と背中にゾクゾクッと戦慄が走った。そう、この部分はまさにこう鳴らなくてはならない、そう思える充実した響きだ。特に弦楽器の粒だちがいい。弦と弓がしっかりと触れ合い、胴が震える姿がまるで目に見えるような鳴り方だ。「英雄の敵」や「英雄の戦場」の部分での粗暴とさえ感じる荒々しい音楽も、耳障りになる一歩手前の激しさで再現した。一方、「英雄の妻」のヴァイオリン・ソロの妖気を孕んだ可憐さは、永遠の処女のような清らかさと可憐さが、成熟した女性の色気を淡く含みながら香り高く舞い上がる。ここは伸びやかで柔軟な高音域の再現力が問われる部分だが、見事な実力を聴かせてくれた。そしてフィナーレの「英雄の引退と完成」は、濃厚な音色で悠揚迫らぬ成熟と諦念の境地をじっくりと描きだした。
 この組み合わせの相性の良さは、稀に見るほどのものだと感じた。このように濃厚な描写、繊細な表情、激しさを、音楽に沿って的確に再現するには、個々の機器が優れているだけではだめで、システムの総合力が優れていなければならない。アンプからの信号がなければただの大きくて重い箱に過ぎないスピーカー、スピーカーに接続されなければただの電気箱に過ぎないアンプが組み合わされて、はじめて豊かな音の世界を作り上げることができるのだ。そのオーディオならではの醍醐味を、この組み合わせはしかりと感じさせてくれた。
仕様
 ATC-1
 型式  真空管式プリアンプ
 使用真空管  12AX7(ECC83)×5/12AU7(ECC82)×2
 出力電圧  定格2V/最大15V以上
 入力インピーダンス  Phono 47kΩ/Line 100kΩ
 出力インピーダンス  600Ω
 外形寸法  430(W)×90(H)×325(D)mm
 重量  7kg

 ATM-300
 型式  真空管式ステレオパワーアンプ
 出力  80W+80W(8Ω)
 使用真空管  300B(WE)×2/5U4G×1/12BH7A×2/12AU7A(ECC82)×2
 入力インピーダンス  100kΩ
 外形寸法  430(W)×275(H)×245(D)mm
 重量  24kg

 Cremona
 型式  3ウェイ4スピーカーシステム(リア・バスレフ型)
 使用ユニット  高域用:29mmソフト・ドーム型
 中域用:150mmハードペーパー・スライスト・コーン型
 低域用:180mmハードペーパー・スライスト・コーン型×2
 再生周波数  32Hz〜40kHz
 インピーダンス  4Ω
 出力音圧レベル  90dB/W/m
 クロスオーバー周波数  300Hz/3.5kHz(6dB/oct)
 入力端子  シングル・ワイヤリング
 外形寸法  220(W)×1050(H)×410(D)mm(本体)
 重量  36.8kg
 備考  『メイプル』仕上げのほか、黒檀調仕上げの『メイプル・グラファイト』があります

製品の詳細は: ノア

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